挑戦と挫折 中編
再就職したのは小さな食品商社だった。
仕事内容は顧客を訪問し必要な資材の注文をもらう
それをメーカーに発注し中間マージンを頂くというなんとも古めかしいビジネスである
元来、人の話を聞くの嫌いじゃないので
足繁く顧客の元に通いたくさんの話を聞かせてもらった
成功事例
失敗事例
苦労した事
工夫した事
その中で営業マンとしての知識や考え方、自分のスタイルを確立し
ビジネスに対する臭覚も養っていった
新規開拓営業や飛び込みなど率先して行った
精神的負担は掛かるが営業マンとして大事なメソッドが集約されているから
そして
新規開拓営業の一番の醍醐味は売り上げではなく
「自分と同じ考えや波長の人と出会える」
それが一番嬉しい事だし励みになった
なので営業成績はよかったし、最年少で役付きまで上り詰めた
そんなの楽しい仕事も慣れてくると業界ならではの仕組みやしきたりに疑問を持ち始めた
私の勤めていた会社は絵に描いたようなBtoBの商いをする
メーカーから商品を購入し末端顧客に販売する
発注書と売り上げ伝表を書きマージンを搾取すると言う古典的な手法
そして
メーカーは末端顧客まで管理出来ないので
我々のような商社に顧客を束ねてもらい管理してもらう
末端ユーザーは与信がない会社や使用量が少ないとメーカーと直接取引が出来ないので代理店兼商社に仲買いしてもらい商品を購入する
これが大まかな流れである
そして「商流」と言う、これまた古いしきたりが存在し
会社の為に嘘をつき続ける羽目になり、それが原因で疲弊するきっかけに
「商流」とは指定のルートと同義で
例えばメーカーAの商品を商社Bを経由し顧客Cに販売していたとする
それを横取りしたい商社Dが割って入り顧客Cに対し、えびす顔の営業マンがこう切り出す。
「コストダウンのお力になりたいのでルートを切り替えてもらえないでしょうか?」
商社Dは自社のマージンを削って、薄利でも仕事を取りにきている。
商社Bが対メーカーに対し力がなかったり、顧客としての威厳を保てていないと乗り換えられてしまう可能性がある
担当営業は今まであった売り上げをなくすまいと必死になる
顧客に何度もお願いしたり、値引きしたり、接待したり、都合のいい嘘ついたり
とにかく大変であるし精神が疲弊する
全くもってプラスの仕事ではない
そして自分が身を置いている会社のビジネスモデルに疑問を持つようになった
細かい事は抜きにして顧客と商社の利益は相反する
顧客は少しでも安く仕入れたい
商社は中間マージンを顧客にバレない程度にぼったくりたい
だからである
ぼったくり上手、マージン中抜き上手が出世する社風
ぼったくりなんて自分がされたら嫌なのに他人は平気でぼったくり
過去の成果を挙げたぼったくり案件について幾度も自慢気に話してくる上司にはついていけるはずもなく
だんだんと会社と私の距離が遠くなるのは時間の問題であった
続く